香取神宮の主神は経津主命。その起源は神話に始まり、国土を平定した神として皇室の崇敬厚く、旧官幣大社。関東を代表する古社である。
晩秋に行われる大饗祭(だいきょうさい)は東国三十三国の神々を招いての饗応の祭り。香取神宮ならではの特殊神饌が用意される。水郷特産のマコモで組んだ巻行器(まきほかい)と呼ぶ、工夫を凝らした独特の容器に飯を盛る。水郷に群れる鴨を捕らえ、雌雄一対の鴨をさばき、内臓を取り出し、再び羽根を広げたように三方に飾りあげた羽盛、鴨の内臓や鮭、フカの切り身を組み合わせ、三方の上に高く盛りつけた鮭の鳥羽盛などが神饌殿で準備される。
利根川の水運で栄えた詩情豊かな佐原の街が夕暮れに沈む頃、徳川綱吉将軍が1700年に再建した壮麗な香取神宮本殿前参道に篝火が燃える。笛、太鼓の楽が始まり、神官たちが参道に用意された所定の位置につく。神饌が神官たちの手から手へと受け渡され、神饌殿から拝殿の祭壇に飾られる。祭衣を着た子どもたちが楽の音に誘われるように優雅に大和舞を舞う。
厳粛にして素朴な神事が終わると、巻行器の飯は無病息災を祈る参拝者に下げられる。
【アクセス】
JR香取駅から約1キロメートル
千葉県佐原市香取 香取神宮