9月23日
カムイコタンはアイヌ語の地名で、神の在所の意味である。北海道を代表する大河、石狩川の難所で、古来水上を往来する多くの人々が苦労し、遭難して犠牲を払ってきたところで、神の怒りをしずめるために祭を行ってきた聖地でもある。
北海道中央部、石狩平野と上川盆地の間、石狩川の峡谷にあるカムイコタンは、奇岩、洞穴などの、自然の荒々しい造形美でも知られたところである。アイヌの人々の伝説によると、太古の昔、此処に悪い神が棲み、往来の人々を苦しめるので山ノ神がそれを咎め、争いになった。山ノ神は、英雄サマイクルの応援を得て、悪神を退治したという。
しかし、大自然の難所には変わりなく、災難が繰り返されて、人々は犠牲になった方々の鎮魂を祈り、航海の安全を祈って、こたんまつりを行い、神慮を慰めてきた。
当日、固有の祭装束、サバウンベと呼ぶ冠を頭に、長老が現れる。手に長いイナウを持ち、河に突き出した高くそそり立つ岩頭に登り、祈りの言葉を捧げた後、はるかなる足下を流れる石狩川の急流めがけて、イナウを投げ入れる。
川岸の広場では、焚き火を囲んで、伝統の装束の婦人たちが「鶴の舞」をはじめ、歌と手拍子で踊りが次々に奉納される。
折から北海道も紅葉の美しい秋、周辺の大自然のさまざまな造形美や、長い歳月をかけてきた甌穴などの自然美や、それにまつわる伝説などにひかれて大勢の人々が訪れるので、近年は音楽コンサートや餅つきなどのアトラクションも組み込まれてにぎわっている。
【アクセス】
旭川駅よりバス30分
北海道旭川市神居町神居古潭
写真と文章:渡辺良正