8月第1日曜日(四年に一度)


 今年の夏、巨大な竜蛇が関東平野に現れます。太い竹の骨にワラを巻きつけた胴の長さ三十六メートル。ひときわ大きい頭部の周りは六メートル。体重三トン。

 ほら貝が響き、太鼓を打ち鳴らし、雨乞いの祈りを込めた歌を唱和しながら地域民総出で担ぎまわり、雷電池(かんだちがいけ)に飛び込み三周します。日照りの年に行われた雨乞い祭です。現在は、埼玉県選択無形民俗文化財に指定されています。

 脚折(すねおり)地区は、昔は木立の深い森が広がり、雷電池には大蛇が棲むと信じられてきました。江戸時代、池の周辺を開拓した農民は、日照りが続き農作物が枯れ始めると凶作の危機感から雨乞い祈願に一致団結、雷電池の竜神に祈りました。すると雨が降ったのです。しかし、開拓が進み、池が小さくなると、大蛇は上州板倉の雷電池へ飛び去ったといいます。それでも日照りの年の雨乞い祈願は続けられてきました。昭和五十一年から保存会をつくり、四年に一回、八月上旬、昔ながらに巨大な竜蛇を作り担ぎまわっています。

 氏神社の白鬚神社の境内に保存会の関係者が集まり、約一週間かけて竜蛇を作ります。孟宗竹八十本、麦わら五百七十把、大量の縄を巧みに手分けしての共同作業となります。

 当日昼、白鬚神社で雨乞祈願の神事、竜蛇の渡御祭に移ります。ほら貝、太鼓の響く中、地区民に担がれた竜蛇は、巨体をくねらせながら地区内を練ります。途中、善能寺で僧の祈願を受けます。
「雨降れたんじゃく、ここにかかれ黒雲」と雨乞祈願の歌を唱和しながら、大勢の観客が待機している雷電池へ飛び込みます。

【アクセス】
JR八高線「用土」駅下車徒歩20分
埼玉県鶴ヶ島市脚折