1月19日

白木野人形送り1
白木野人形送り2

 
 白木野は岩手県南西部、秋田県との県境に近い豪雪地帯である。初夏の青葉、秋の紅葉と四季の自然美に恵まれたところだが、過疎に悩む地域でもある。

 一月中旬冬の真っ盛り、ひっそりとした町の公民館に、地区の人がワラ束を持ち寄り、「厄払い祭り」とも呼ばれる祭りの主役、「ワラ人形」作りが始まる。江戸時代からの伝承行事だけにベテランの古老たちが中心となって、巧みにワラ人形を作っていく。外は寒いが部屋は暖かい。人形作りも楽しそうだ。カメラマンがどこからともなく大勢集まってきて、あれこれ質問すると快く応対してくれる。ワラを器用に束ねて大きな男子のシンボルを作る。人形は武者人形である。腰には二本の刀を差している。和紙に描かれた表情は男らしく堂々と威張っている。餅を包んだワラツトを背負い、両腕には穴あき五円玉が吊される。

 出来上がった人形は子どもに担がれ、ホラ貝を先頭に太鼓を打ちつつ積雪の道を約一キロ余り、村はずれの丘の林まで送っていく。葉をすっかり落とした雑木林の中の、大きな栗の木の高い枝に人形をくくりつける。小高い丘の林だけに、ワラ人形は村を見渡して、村へ入ってくる悪党を誰よりも早く見つけ出せる位置である。

 参加者二十数人の村人たちは、持参した御神酒を湯飲み茶碗に入れて皆に配り、「悪い病気がはやらないように、今年も家内安全、豊作でありますように」と厄払いを祈願して乾杯した。

 平成十七年、白木野のある湯田町は沢内村と合併して西和賀町となった。


【アクセス】
JR北上線ゆだ高原駅下車100メートル
岩手県和賀郡西和賀町


写真と文章:渡辺良正