9月最終日曜日

神輿のねりこみ
奉納武芸


 君津市の市域は広い。東に大きく広がった端近くに宿原はある。JR木更津駅からバスでたっぷり一時間。宿原で降りて三島神社へ行く。

 十一時半、花火打ち上げ、笛・太鼓のにぎやかな祭囃子が秋空に響く。周辺は静かな山村風景である。

 巨大な幟旗を押し立てて参道を進んでくる。幟旗には「奉献三島大明神」「奉納御祭礼」など大書してある。参道途中から神輿も加わる。神社下の広場には綱を張り、榊の枝を立て、奉納武道の場が用意されている。

 午後一時、笛・太鼓の囃子が始まる。花火も天高い秋空に響く。奉納武芸が始まる。まず、和装・袴姿の子どもたちが左右から現れて木刀を手に、武技を疲労する。勝負よりも礼を守っての模範的演技の披露という面が強い。しかし、十代、二十代と演者の世代が進むにつれ、気合も鋭くなり、双方の動きの見事さに観客も思わず緊張して一試合ごとに声援が飛び、拍手が送られる。

 武具は棒、木刀、真剣、槍、鎌、くさり、青竹と様々だが、大きな割竹や和傘をばっさり斬るなどの演技も披露される。人里離れた山里で武の祭りとは不思議な気もするが、村には、その昔、源頼朝が安房から鎌倉へ向かう途中、従者が護身術としてこの地の農民に武術を伝えたという伝説がのこっている。

 同じ祭場で、雨乞いに始まったという、ささら「一人立ち三匹獅子舞」が、数曲演じられる。去年は後継者難で中止されたが、今年は例年どおり披露される予定である。

【アクセス】
JR内房線木更津駅から安房鴨川行きバスで宿原下車、徒歩五分
千葉県君津市宿原 三島神社


写真と文章:渡辺 良正