1月7日(第1金・土曜日)

稲荷大明神を先頭に、主人に挨拶して座敷に坐す

 

奴二人 おどけた所作で現れてまゆ棚を作り、神棚へ供えて豊作を祈願する


 福島県中通り、白沢村は阿武隈川支流に開けた農村で、昔は養蚕が盛んであったところ。

 新春、七福神が村の家々を訪れ新年の豊作と福寿をもたらしてくれる正月行事は三百年余の伝統がある。

 村の家々では、座敷の神棚に餅花を飾り、天照大神をはじめ、養蚕の神や様々の神々の名を大書した掛け軸を吊して歳神様を迎える。

  冬の日もとっぷり暮れた午後六時過ぎ、太鼓、笛、三味線などの楽が外からだんだん近づいてくる。七福神の訪れである。

 稲荷大明神を先頭に、毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人、恵比寿、大黒、と一人ずつ主に挨拶をして席に並ぶ。

 ひょっとこ面が二人現れて、おどけたしぐさで土間から見物する村人を笑わせながら、田遊びの所作、ワラでまゆ棚を仕上げる。そして「福は内、鬼は外」と餅や蜜柑をまく。

 女装した着物姿の二人が軽やかに伊勢音頭を踊り、正月の祝福行事に彩りをそえる。

 新春、福徳・長寿を祈願して地区内の有志の家々を祝って回る七福神を、岐阜県白川村や佐賀県有田町でも取材した。七という聖数に福の神を集めた信仰は、室町から江戸時代にかけて始まったと言われ、江戸時代中期、庶民の生活が落ち着いて余裕ができた頃から広く各地へ伝播したらしい。

 興味深いのは、突出して人気の高い恵比寿神の語源は異民族を示す「夷」、今は豊漁を守護する神・商売繁盛の神でもある。大黒天は本来インドの戦いの神だが大国主命と習合して福徳の神となった。ほかの五神もインド、中国からの由来。島国日本に住む我々に財宝や福徳、長寿をもたらす神々は海の向こうから訪れるとの信仰は今も生きており、「七福神参り」は盛んである。

【アクセス】
東北本線本宮駅より約10キロメートル/タクシー15分
福島県安達郡白沢村白岩地区